Sucrose

同人のお知らせと備忘録

トビアスさんとエステラさん

ビアスさんアストルティアナイトのエントリーおめでとうございます!!

というわけでトビアスさん(+エステラさん少々)のちょっとした街角のワンシーン。

ver3.1ちょっと前ぐらいの話です(たぶん)

「トビアス様とエステラ様、どちらが解放者になられるのかしら」

 ほんの小さな噂話がなされているのは聖都エジャルナの町の片隅であった。天井が低く、閑散とした細い脇道にて、竜族の女性二人は、周囲に人通りがないことを確かめながら話を続ける。

「私はトビアス様だと思うわ。カッコいいし背も高いしおまけに頭もいいし、何よりあんなに頑張ってる神官様は他にはいらっしゃらないと思うの」

「うんうん。トビアス様はほんっと見てるだけで目の保養だわー。あ、でもエステラ様もいい線いってるよねー。絶対どっちかだと思うんだけど!」

「ねー」

 これといって、この二人が珍しい会話をしているわけではない。

 明るい声でなされる噂話とは裏腹に、ここ炎の領界は半分ほど壊れかけていた。魔物たちは暴れ、住人たちに危害を加え続けており、誰がいつ命を落としてもおかしくない状況だ。

 そんな世界を救うべく、ナドラガ教の神官たちは人々を助けながら日々打開策を講じていた。その中でもトビアスエステラは町の者にも名前が知られており、いつかは竜族の解放者になると期待されている。

「そういえば、最近エステラ様の姿見かけないよね」

「うん、見ないよね。どこかの村に行ってるって聞いたけど、忙しいのかな。トビアス様は結構見かけるんだけど……ってキャー!」

 人の噂をすればなんとやら、まさにその噂の張本人が現れた。肩のあたりまで伸びた赤い髪、肩幅が広く背の高い体つき。まさかこのタイミングで現れるとは思わず、背筋がぴんと伸びる。

「と、トビアス様!」

「ご、ごきげんうるわしゅう!」

 緊張が態度と声色にそのまま出た二人分の黄色い挨拶を受け、トビアスは丁寧にお辞儀をした。さすが、その動きといい態度といい、噂通りの丁寧さだ。

「みんなトビアス様に期待しています。トビアス様が『解放者』となって、この世界を救う日をお待ちしておりますっ!」

 ふっ、とトビアスの口元がぴくりと動いた。

 まるで、最初からわかっていたことであったかのように。

「……もちろん、最初からそのつもりだ」

 すれ違いざまに声をかけるトビアスの表情には、珍しく、誰にも見せたことがないほどの笑みが浮かんでいた。

***

「……まったく、トビアスも調子に乗ってるんだから」

 黄色い声を上げていた彼女たちがいなくなった後、たまたま近くを通りかかったエステラは、微笑みひとつでトビアスをからかう。

「そ、そんなことはない!」

 短く言い切ったトビアスの表情は、少しばかり火照っていた。

 炎に包まれた赤い空と、街灯の黄色い灯りで辛うじて目立ってはいなかったけれど、当の相手にはしっかりと伝わっていた。

「後ろでコソコソ覗き見など、趣味が悪い」

 最後の抵抗とばかりに、トビアスエステラから目を逸らした。

 ――けれど、時すでに遅し。

「はいはい」

 この勝負、明らかにエステラの方に軍配が上がっていた。

 エジャルナの街は、いつも通りの様相を示していた。人々は解放者を求め、神官たちはその現状を打破するために駆け回っている。突破できそうで突破できない試練は、変わらず目の前に立ちはだかっている。

「そろそろ会議のお時間ですよ」

 何をしに来た、というトビアスの言葉を封じるには、十分だった。

「わ、わかってる」

 見上げた先には、ナドラガ大神殿がくっきりと見える。

 二人は瞬時に普段の神官の顔へと戻り、足並みを揃えて向かっていった。

fin.

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 トビアスのムービー(思い出映写機大活躍)を見返していて、案外名誉にこだわるトビアスを見てウフフと思ったのがきっかけです。トビアスエステラのコンビも好きです。美男美女!

 今後のストーリー次第でどうなるかわかりませんが(現在3.1前期)、トビアスが最終的に悪役だったとしてもそれはそれでオイシイと思うぐらいには好物です。でも内心今後の展開にはガクブルです。どうなるやら。